東をどりと料亭

2018/04/27

東をどりと料亭のイメージ画像

 料亭とは何でしょう。そう呼ぶ言葉の使い方があいまいになっていると感じます。日本建築の館で美食を供し、特別な旨酒のある処、それは立派な日本料理屋。理屈のついで、料理屋は何を商うのか。料理を商うから料理屋では浅薄過ぎます。料理屋にとって料理は大切、けれど要素の一つです。仲居の気配りが宴席の進行を、客迎えには掃除に始まり掛け軸や活ける花、館の造作は設計に遡ります。色々な要素、ひいては顧客の気分や体調まで含みつくられる空気こそ料理屋が商うものと信じます。
 その料理屋に芸者(芸能)を加えると料亭、この定義は分りやすくないですか。外国の人へは日本で育まれた料理をこの国の音楽、舞踊と共に楽しむ処と紹介します。スペインならばフラメンコのショーがある美味しいスペイン料理店、そう置き換えると伝わります。ひとつ違うのは先程までのダンサーがショーを終えると座の進行役に替る事、これは日本独自と付け加えます。
 さて街の料亭と芸者で構成される新橋花柳界、その名は銀座に架かっていた新橋と云う石造りの橋の名に由来します。実は新橋駅やそこから付いた地名も今は無き橋からです。実際、料亭街は東銀座から築地の一帯で芸者の発祥は銀座通りの八丁目界隈、新橋芸者は銀座の芸者なのです。幕末に興り、明治に発展する新橋花柳界、街の特色を芸の一流と定めて今日に至ります。芸処と呼ばれるようになる大正の終り、その発表の場に演舞場を造り、そこに始まる東をどりは今年で九四回目になりました。
 日本の音楽と踊り、邦楽や舞踊は今、遠い処に在るようです。十年前、街の発祥一五〇年に東をどりは姿を変えました。普段は劇場の演舞場をこの時限りの料亭に見立てます。我々の食と旨酒を持ち込み舞台と合せて料亭三大要素が揃います。音楽、踊り、料理、美酒、酒肴、茶菓、活け花、綺麗で美味しい日本の素敵を寄せました。文化の始まりは遊び、五感で日本を遊ぶ東をどり、普段は遠い日本文化の入口です。
(東京新橋組合 頭取 岡副 真吾‐料亭 金田中 主人)


公演

第九十四回 東をどり

2018/05/24~2018/05/27
新橋演舞場