東京アート&ライブシティが繋ぐ未来
さる11月1日(木)、観世能楽堂において、東京アート&ライブシティのコラボレーションイベント「日仏宮廷恋愛模様」が行われました。クラシックの殿堂である王子ホールと、能楽の殿堂である観世能楽堂との初のコラボレーションイベント、おかげさまで多くのお客様にご来場頂き、好評のうちに終えることが出来ました。客席に響き渡るチェンバロやハープの音色、朗読をされた野々すみ花さんの凛としたドレス姿が、少しの違和感もなく能楽堂に溶け込んでいた事は、多くの方にこの能楽堂の新たな可能性を感じて頂く契機にもなったのではないかと感じています。
世阿弥の遺した言葉に「住する所なきをまず花と知るべし」というものがあります。一つの芸に安住していては、お客様に飽きられてしまう、恐れる事なく、常に変化していく姿勢を忘れてはならないという意味で、私が舞台人として、常日頃から強く意識している言葉でもあります。この東京アート&ライブシティの企画では、今回の公演のように各コンテンツの枠組みを超えた、新たなコラボレーションを様々な形で展開して行こうとしています。それ自体がまさに新たな芸術を産み出す事にもなり得るのですが、最も大事なことは、そこで得た気付きや刺激を、各分野の中にいかに活かしていくか。その結果、時代の流れに沿う形で、芸術が自然と変化していくことではないかと思っています。ここに集うコンテンツは全て、演劇・映画・美術、どれをとっても長い時間かけて醸成されたものばかりですが、時間を掛けて創られたアートの根底には、必ず共通する人間世界の普遍的な何かが流れており、それらが組み合う事で初めて産まれる効果もあるのではないでしょうか。
いま、東京は2020年オリンピックに向けて各分野の動きが加速していますが、この東京アート&ライブシティがオリンピック後にも新たな文化芸術の発信点として、さらなる発展を遂げられる事を願ってやみません。
武田宗典(能楽師観世流シテ方)