広場と芸術表現

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先日、東京ミッドタウン日比谷で開催された『Hibiya Festival』の野外ステージ上で約30分間、コンテンポラリーダンスのパフォーマンスを披露した。


私たちは普段、観客を非日常に誘う事をベースに置き、コンセプトや身体の状態、それらを透してどのような状況や風景を描き出すかを決定し、主に劇場という閉じられた空間の中で作品を上演している。


そんな私たちが、仕切りのない広場=完全な日常へと飛び込んだのだ。


四方を観客に囲まれた(ミッドタウンの上の階から観ていた方もいたので五方だ)開放的な空間で、あえて「閉じ込められた部屋・初めて出会う人々」というコンセプト、状態を作り出し体現した。
初めてコンテンポラリーダンスに触れる人にも足をとめてもらいたく、身体と音がリンクしダンサブルに動く場面も用意したが、逆に抽象的で静かなシーンも創った。


興味を持つ人、持たない人、作品への様々な捉え方。それらはとてもシンプルに私たちの目に飛び込んできた。終演後に「これはどんなジャンルのパフォーマンスですか」「どんなことを表現していたのですか」と聞いてくださる観客もいた。閉じられた空間で活動していては生まれないコミュニケーションだった。


限られた条件下での表現を探すことはとてもクリエイティブだ。


広場は暗転にはならない。(昼間だと)照明効果もつくれない。雑音も溢れている。そのような空間に芸術を出現させる試みをしたことで、様々な課題と可能性を発見できた。


例えばスローで抽象的なシーンは時に観客の集中力を途切れさせるが、一方で夕刻などに陰影が広場を美しく彩る時、それらは印象的なシーンとして映る。
30分という時間軸で作品を創るのではなく、時刻と共に変化する環境を軸に演出や振付を変化させるのも面白いかもしれない。


日比谷の広場は振付家にとって新しい表現の可能性を見出させてくれる魅力的な日常だった。この経験は新たな創作へと向かうヒントになりそうだ。
坂田守・長谷川まいこ(Tarinof dance company)