インバウンド業界を支える通訳案内士の今
2017年の訪日外国人は2869万人と、統計開始以来の最高値を更新しました。今年は自然災害の影響で客足が鈍ったものの、このまま記録を更新することでしょう。
2018年はインバウンド業界にとって節目の年となりました。1月に通訳案内士法が約70年ぶりに改正され、通訳案内士にしか許されていなかった外国人への観光案内業務が無資格者にも解禁されました。通訳案内士の数が不足しているための措置と言われていますが、外国人でも有償での観光案内業務が可能となった今回の法改正は、現役通訳案内士に衝撃を与えました。イタリアやスペインなどの観光立国は国家資格の観光ガイドの地位が高く無資格者の観光案内には厳しい取締りがあります。日本はこれとは逆の流れです。
通訳案内士の競合は無資格ガイドだけではありません。ほとんどのお客様が今、スマホを持っており自分で何でも調べGPSで目的地に行けます。先日お客様に「ここに話して」とスマホを口元に向けられました。自動翻訳アプリで自分の言葉がイタリア語になったのには驚きました。
一方、ITは劇的にガイドの働き方を変えています。最近人気なのはマッチングサイトです。自分の開発したツアーをサイトに載せると世界中から問い合わせが入り、条件があえば商談成立という流れです。今まで代理店経由で受けていた仕事も直接受けられ機会は広がりました。でもネットは「参考になった。ありがとう」と結局情報だけ取られ終わることも多く実際シビアですが。
外国人客の中には通り一遍の観光でなく何か特別なことをしたいという方も多く、そんな時は文化体験をお勧めします。通訳案内士の腕の見せ所です。
一つ一つの所作に込められた意味
着物にあしらわれた季節の柄
細部にも宿る美意識
興味を持たれる対象は千差万別。どんなことでも日本を知る一歩となるなら嬉しい限り。褒めて頂くと何やら誇らしい気分になります。先日も銀座で日本舞踊体験イベントをしたばかり。一流の演者の放つ熱に魅了された贅沢で特別なひと時でした。
長きに渡り日本のインバウンド業界を支えて来た通訳案内士の役割も、時代の趨勢で変わって行くでしょう。どんな形であれ日本の良さを外国の方にお伝えしていけたらと思っています。
八谷 和代(全国通訳案内士)