「ADACHIGAHARA」-銀座の地下に鬼が棲む 出演者特別インタビュー!vol.3
「ADACHIGAHARA」-銀座の地下に鬼が棲む 出演者特別インタビューvol.3 をお送りします!
公演への意気込みや舞台裏などをお伝えしていきます。
このインタビューだけの内容ですので、ぜひお楽しみください。
武田宗典さん・篠崎“まろ”史紀さん・森谷真理さん・
亀井広忠さん・加藤昌則さん・家田淳さんにお話を伺いました!
――前回『はごろも』にも参加されている皆さんですが、前回の公演と比べて進化した点や、今回ならではの取り組みはありますか?
武田「敢えて前回の『はごろも』からもう一歩踏み込む形でチャレンジしてみようということで、『安達原』を選びました。クラシックと能を合せる試みは他の団体でもやっていると思うのですが、この『安達原』を演目に選ぶことは多分あまりないのではないかと。
『はごろも』は舞と謡で進む舞踊劇なので、親和性が高くクラシックに入り込みやすい余地はあるんですね。でも本作は鬼が出てくるお芝居なので、そこにクラシックを組み合わせる選択肢はあまり取らない。そういう意味で『はごろも』以上にお客様にどう見えるかが我々も想像しにくいので、とてもドキドキしながらも楽しみにしています」
篠崎「コラボレーションというと、異なる背景を持つものを掛け合わせて新しい何かを模索すること思われがちですが、実はそれぞれの在り方を再確認する機会だと言えます。
特にお能のような伝統芸能は元から持っているエネルギーも強いし、決まり事も多い。その中に新しいものを入れていく作業はその元を知っている人間でなければ無理だと思うのですね。そういう意味では、そのスタート地点に僕らは立てているという面白さは感じています。
元々はお能にしろ、音楽にしろ、様々な見えないものが融合することで成り立っていて、それぞれの分野が接していた見えないものは互いに違うものです。
現代では音楽や演劇、お能や歌舞伎は娯楽になっていますが、元はそういう見えない人知を超えた何かを模索する中で生まれたものであり、その作業こそ、この混沌の時代に必要なのではないでしょうか。
前回、前々回の『はごろも』では、共演することで新しい何かが生まれて、それが広がる可能性を求めていましたが、今回に関しては、見えないもの、人知を超えたものに対しての感覚を共有する機会になるのではないかと思います」
森谷「前作品の『はごろも』とは全く違った雰囲気の作品ですし、私が求められる色も違います。頂いている楽譜の中の音とお能と、実際に共演してみるまでどんな空気感になるのか分からないので、すごく楽しみにしています。前回よりも面白いものに仕上がりそうな予感はあります」
亀井「スコアで合わせるとどうしてもお互い(クラシックと能)の持つ強靭な精神性が揺らいでしまうと思われますので、迎合しすぎないよう緊張感と距離感を保った上でのやり取りこそが肝要であるかと思われます」
――最後に、公演を楽しみにしている皆様へ一言ずつお願いします。
武田「こういった時期ですが、超一流のメンバーが集まる滅多にないチャンスですので、能やクラシックをまだ観たことがないという方にこそ、観て頂きたいです。
終演後には出演者や作曲・演出担当らを交えてのアフタートークもあって、お互いにこう思っていたんだなというちょっとした反省会が見られる。そこも見どころだといえますね。是非多くの方にご来場頂いて、楽しんでもらいたいです」
篠崎「会場にいることでしか感じられない空気があります。映像で観たとしても、記録は知識であり、記憶にはなりません。人間が創り上げ積み重ねてきた芸術を掛け合わせることで、想像以上のものが生まれるはずです。僕は、今回の舞台では人知を超えた “何か” が下りてくる感覚があります。それを皆様と共有できれば幸いです」
森谷「きっと前回公演『はごろも』以上に能とクラシックの世界が深まり、多くの方に楽しんで頂けると思いますし、私自身もすごく楽しみにしています。少しでも能やクラシックに興味があれば、必見のステージです。皆様のご来場を心からお待ち申し上げております」
亀井「能楽囃子がクラシックの表現を壊してしまわないよう、ただその事を念頭に置いて勤めさせて頂きたく存じます。なかなか外に出て『生きた舞台』を観に行くということに勇気が要る世の中ではございますが、配信とは違う、舞台人の生の体温を感じることが出来るのが『舞台』なのだと思います。
当日はご来場心よりお待ち申し上げております」
加藤「能と音楽が融合、新しいそれぞれの分野では見られない新たな舞台の世界を創造する瞬間を生み出すかもしれません、いや、そんな気がしています。この新しいものが生まれる瞬間の興奮はそこに立ち会う人にしかわからないものです、それをぜひ期待し、立ち会っていただきたいなと思っています」
家田「普段からお能に親しんでいる方にも、あまりなじみのない方にも、必ず新鮮に体験していただける舞台になると思います。どうぞお楽しみに」
プロフィール
武田宗典 Munenori Takeda (能楽師シテ方観世流)
(公社)能楽協会会員。重要無形文化財総合指定保持者。(ー社)観世会理事。早稲田大学第一文学部演劇専修卒。父・武田宗和及びニ十六世観世宗家・観世清和に師事。2歳11か月で初舞台、10歳で初シテ(主役)、以後、「石橋」「乱」「道成寺」「望月」「翁」等を披く。海外公演多数。2014年アメリカにて、能と現代オペラのニ部作競演『Tomoe & Yoshinaka』を企画し、両作品で主演を果たす。2021年(ー社)EXTRAD主催公演において、試作能「桃太郎」を製作・主演。『武田宗典之会』主宰。舞台公演の他、「謡サロン」等の能楽講座・ワークショップを国内外で多数開催している。
篠崎“まろ”史紀 Fuminori Maro Shinozaki (ヴァイオリン)
愛称 “まろ” 。NHK交響楽団第1コンサートマスター。3歳より父にヴァイオリンの手ほどきを受ける。15歳の時に毎日学生音楽コンクール全国第1位。高校卒業後ウィーン市立音楽院に入学。翌年コンツェルト・ハウスでコンサート・デビューを飾り、その後ヨーロッパの主要コンクールで数々の受賞を果たす。1988年帰国後、群馬交響楽団、読売日本交響楽団のコンサートマスターを経て、97年に34歳でNHK交響楽団コンサートマスターに就任。以来 “N響の顔” として国内外で活躍中。96年より東京ジュニアオーケストラソサ工ティの音楽監督、WHO評議会委員を務め、そのコンサートにも熱心に取り組んでいる。2020年度第33 回ミューシック・ペンクラブ音楽賞受賞。
森谷真理 Mari Moriya(ソプラノ)
武蔵野音楽大学大学院首席修了後、ニューヨーク・マネス音楽院プロフェッショナル・スタディーズコース修了。メトロポリタン歌劇場『魔笛』夜の女王で成功を収めた後、リンツ州立劇場(墺)専属として『マリア・ストゥアルダ』、『椿姫』のタイトルロールなど様々な役を演じ、ウィーン・フォルクスオーパー、ライブツィヒ・オペラなどにも客演。びわ湖ホール『リゴレット』ジルダで国内オペラデビュー以降、同『ローエングリン』工ルザ、日生劇場『ルチア』、ニ期会『ルル』『蝶々夫人』『サロメ』いずれも題名役で高評を得る。コンサートでも国内外の主要オーケストラと共演し、最近ではオペラ・アリアによるN響公演で絶賛を博す。令和元年「天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典」で国歌独唱を務めた。
亀井広忠 Hirotada Kamei(大鼓)
能楽囃子葛野流大鼓方十五世家元。1974生まれ。父ならびに故・八世観世銕之亟に師事。6歳のとき「羽衣」で初舞台。以降、囃子だけでなく子方などでも数々の舞台をつとめる。
新作能や復曲能を多数作調。2004(平成16)年ビクター伝統文化振興財団賞奨励賞、2007(平成19)年第14回日本伝統文化奨励賞を受賞。2016(平成28)年1月葛野流十五世家元を継承。
「三響會」「広忠の会」「佳名会」主宰。
加藤昌則 Masanori Kato(作曲家・ピアニスト)
東京藝術大学作曲科首席卒業、同大学大学院修了。作品はオペラ、管弦楽、合唱曲など幅広く、創意あふれる編曲にも定評がある。多くのソリストに楽曲を提供、共演ピアニストとしても評価が高い。独自の視点、切り口で企画する公演やクラシック講座などのプロデュースカにも注目を集めている。NHK-FM「鍵盤のつばさ」番組パーソナリティー。長野市芸術館レジデント・プロデューサー。
家田淳 June Iyeda(演出)
10代をアメリカで過ごす。国際基督教大学卒業。エディンバラ大学に留学。RADA(英国王立演劇学校)元校長ニコラス・バーター他に演技を学ぶ。二期会、新国立劇場、ラインドイツオペラ他で世界的な演出家の演出助手を数多く務める。英ロイヤルオペラハウスにて研修。オペラ、ミュージカル、コンサートの演出・翻訳を多数手がける他、字幕製作(日・英)でも活躍。最近では2022年1月金沢歌劇座にて、台本英訳(英語歌詞の執筆)を手がけたオペラ「Zen」が世界初演された。洗足学園音楽大学ミュージカルコース准教授。