ワルツの調べで新たな幕開け ~王子ホール・リニューアルオープン~
王子ホールは、昨年、開館25周年の記念コンサートを終え、今年1月から10月末まで10ケ月に及ぶ改修工事を行っています。何事も上っ面ではなく、目に見えない所こそ肝心。
客席とホワイエのお色直しはもとより、天井裏の吊り物マシンの交換、更に、今まで以上に念には念を入れて、これ以上ない完璧なる!耐震補強を施しています。ホールは本社ビルの2,3階にあって、繭が浮かんでいるような極めて特殊な構造です。4階から上は本社機能、下は吹き抜けのロビーですから、耐震の為に構造を強固にしながら音響環境を維持する為に切り離す部分も作るという、日本のホール建築の多くを担っているチームにとっても例がない大変高度な技術が駆使されています。鉄骨の重量、組み方、客席の座面の張替えなど、変化がある度に設計、施工、技術研究所の三者一丸となって周到に進められています。
ホールは弦楽器に譬えられます。木材から成っている舞台から客席全体が、その日の温度、湿度、演奏家や聴衆の熱気によって呼吸する音楽の森。森は生きているでしょう?ホールも生きているのです。そこで切磋琢磨する演奏家の汗、聴衆の感動、スタッフの思いが詰まった言わばパワースポットのような場所。コンサートはそこでの祝祭なのです。銀座の喧騒を背に一歩、足を踏み入れてみてください。そこには非日常の時間が流れています。
リニューアルオープンは、ホールの誕生日である10月25日。そこで王子ホールでは、25、26日の2日間、NHK交響楽団のコンサートマスター、篠崎史紀さんと仲間たちによる“ウィンナーワルツの夕べ”を開催します。N響の顔、篠崎さんは王子ホールにとって家族のようなアーティスト。篠崎さんの愛称「まろ」をタイトルにしたシリーズ・コンサート『MAROワールド』がスタートしたのは2004年。親子代々上質な音楽を楽しんで頂ける大人の社交場を目指したいホールの夢と長いヨーロッパ暮らしで培ったものを形にしたいまろさんの夢が重なって、以来今日まで14年間、未来を見据えて共に創り上げている企画です。毎回作曲家や音楽のスタイルをテーマに、まろさんのトーク、テーマに併せたワイン、絵画、美術品の展示など趣向を凝らしています。
より華やかにお色直しをした客席でウィーン仕込みのまろさんと、腕利きの仲間たちによるワルツに酔う王子ホールのリニューアルオープン・コンサートへお出かけください。
星野 桃子
株式会社王子ホール 代表取締役社長
兼 チーフ・プロデューサー