銀座の真ん中にホール

2018/08/03

銀座の真ん中にホールのイメージ画像

 明治維新を機に新橋花柳界、歌舞伎によって発展を遂げた粋でいなせな銀座の芸能文化はモガ、モボが闊歩した大正ロマンの時代を彩り、戦後昭和の銀座の裏通りには外来の音楽、シャンソンやジャズが流れていたそうです。お三味線や長唄に混じってジャズ(銀座教会の鐘の音も!)が風に乗って聞こえてきた時代があったと思うと、タイムスリップしてみたい思いに駆られます。


 さて、銀座4丁目、三越伊勢丹の裏手に建つ王子ホールディングス(元王子製紙)のビルの中にコンサートホールがあるのをご存知ですか? 1927(昭和2)年、王子製紙は多くの新聞社が本社を構えていた銀座に自社ビルを建てました。以来戦火にも耐えて60年の歴史を刻み、1989年(平成元年)、老朽化のために取り壊し、91年に現在のビルが完成。その折、「銀座は文化の中心地と言いながらコンサートホールがないじゃないか、よし、作ろう!」と当時の社長の鶴のひと声で、翌92年、銀座初のクラシック音楽専用ホール『王子ホール』は銀座の真ん中で産声を上げました。バブル期の銀座の一等地に315席!これぞヨーロッパのサロン文化の体現!企業がこぞって文化・芸術活動の支援に資金を提供するメセナを掲げていた時代です。以来、国内外の一流の演奏家を招いて質が高いコンサートをお届けしています。中には長期に亘って企画を共に創っている演奏家も少なくありません。彼らは、「王子ホールは日本のホームだ」と言い、昨年のホールの25周年も一緒に祝ってくれました。


 歴代の社長に言われた「良い木を育てるのに(良い紙を作るため)100年かかる。じっくり良いものをやってくださいよ。」という言葉が根幹にあります。これからも銀座の四季の移ろいを繰り返しながら、しっかり根を張って、しなやかに時代の流れを乗り越えてこの地から世界中に文化の種を蒔き続けたいと思います。
 
星野 桃子
株式会社王子ホール 代表取締役社長
兼 チーフ・プロデューサー